税理士に業務を依頼する際、最も大切なポイントの一つが「料金にどこまでの仕事が含まれているか」という明確な理解です。税理士の報酬体系は一見シンプルに見えても、実際には業務範囲によって大きく変動するため、あらかじめ何が含まれていて、何がオプション扱いなのかをしっかり把握することが、信頼関係を築くうえでとても重要です。
以下では、税理士の料金に含まれる主な業務の内容と、その範囲外になることが多い追加業務について、長文で丁寧に解説します。
【1. 基本的な顧問契約の料金に含まれる業務】
税理士との顧問契約で、毎月あるいは毎年支払う基本料金の中には、一般的に以下のような業務が含まれています。
① 会計帳簿のチェックまたは作成指導
- 顧問先が自分で帳簿(仕訳帳、現金出納帳、売上帳など)をつけている場合、その内容をチェックして間違いを修正・指導する。
- あるいは、通帳コピーや領収書を預かり、税理士側が記帳(仕訳入力)を行う場合もある(※これは「記帳代行」として別料金の場合も)。
② 月次試算表の作成・確認
- 月ごとに経営状態を把握できる「試算表」(貸借対照表・損益計算書)を作成し、依頼者に報告。
- 「月次面談付き」の場合、税理士が毎月訪問またはリモートで数字の説明をしてくれる。
③ 税務相談(一般的な内容)
- 「この支出は経費にできるか?」「役員報酬はいくらが妥当か?」といった日常的な税務判断の相談。
- インボイスや消費税の基本的な運用などの助言も含まれることが多い。
④ 決算書・法人税(または所得税)申告書の作成・提出
- 会社の年度末における「決算業務」は基本料金に含まれていることがほとんど。
- 法人税・地方税・消費税の申告書の作成・電子申告までを税理士が一貫して行う。
⑤ 年末調整・源泉徴収票の作成(一定人数まで)
- パート・社員の年末調整や、源泉徴収票の発行業務も、基本料金に含まれていることがある(ただし人数が増えると追加料金)。
⑥ 税務署への届出書作成・提出(必要に応じて)
- 「青色申告の承認申請書」や「給与支払事務所等の開設届出書」など、税務署に提出する書類の作成と提出もサポートしてくれる。
【2. 基本料金に含まれないことが多い追加業務(別途料金)】
以下の業務は、多くの税理士事務所で「オプション」として別途見積もり・請求されることが一般的です。
① 記帳代行(領収書の丸投げ処理)
- 領収書・請求書・通帳などの原始資料を預け、税理士事務所側で会計ソフトへ入力してもらうサービス。
- 月5,000円~20,000円程度が相場で、仕訳数や業種により変動。
② 年末調整(多人数)、法定調書、償却資産税申告
- 年末調整を10人以上処理する場合や、給与支払報告書・支払調書・償却資産の申告などの行政手続きは追加料金対象。
③ 消費税の簡易課税選択届出書などの特殊届出
- 消費税の課税方式変更や、事業開始時の特例適用申請書類など、判断が必要な届出は別料金となる場合がある。
④ 税務調査の立会い
- 税務署の調査が入った場合の対応・立会いは、基本的に1日あたり3万円~10万円ほどの別途報酬が必要。
- 調査後の修正申告が必要な場合、その申告書作成費も追加される。
⑤ 経営計画・資金繰り相談・金融機関対応
- 銀行提出用の事業計画書の作成支援、融資相談、補助金サポートなどは、顧問料に含まれないことが多く、都度見積もり。
⑥ 相続税・贈与税の申告
- 相続税や贈与税は通常の所得税・法人税とは別物で、完全に別契約・高額なスポット業務(最低20万円~)として扱われる。
【3. 顧問料の決まり方の目安】
税理士報酬は全国共通の規定料金はなく、事務所ごとに設定されています。ただし、目安として次のように決まることが多いです。
- 月額顧問料:売上規模(年商500万円未満なら5,000円~、5,000万円以上なら2~3万円程度)
- 決算料:月額顧問料の4~6か月分が相場
- 記帳代行費:月5,000円~(仕訳数による)
- 年末調整・法定調書:1名あたり1,000円~2,000円程度
また、クラウド会計の導入やチャット相談が中心の場合は、より安価な料金体系も増えています。
【4. 成功するための注意点】
● 必ず「業務範囲の明示」がある契約書または説明資料を受け取る
税理士と契約する前に、「この料金には何が含まれているか?」「追加料金が発生する場合はどういうときか?」を確認し、口頭だけでなく紙やPDFの契約内容を残しておくことが重要です。
● 「思い込み」によるトラブルを防ぐ
たとえば、「毎月訪問してもらえると思っていたのに、年1回しか来ない」「節税のアドバイスは無料でしてもらえると思っていたのに相談料が別だった」など、期待と現実のズレがトラブルの元になります。最初の打ち合わせで確認しましょう。
【まとめ】
税理士の料金の中に含まれている仕事の範囲は、表面的には似ていても、実際の内容や深さは事務所によって大きく異なります。だからこそ、契約前には必ず「どこまでが料金内で、どこからが別料金か?」を確認することが、満足度の高い依頼につながります。
信頼できる税理士は、料金と業務範囲を明確に説明してくれる人です。もし不明瞭であれば、他の事務所と比較しながら慎重に選びましょう。事前に納得したうえで契約を結ぶことで、将来のトラブルを避け、税務業務を安心して任せることができます。