会社を子供に相続させて事業承継をスムーズに行うためには、税理士との連携が非常に重要です。以下に、税理士に何をどのようにお願いすべきか、具体的かつ丁寧な長文でご案内します。
税理士にお願いする方法
会社を子供に相続させ、円滑に事業承継を進めるためには、まず信頼できる税理士に対して、自身の意思や今後のビジョンを明確に伝えることが重要です。その上で、以下のような依頼を行うと良いでしょう。
【依頼の始まり方】
「先生、私も年齢を重ねてきましたので、そろそろ自社の将来について真剣に考える時期だと思っています。現在の会社を、将来的には子供に承継させたいと考えており、相続や事業承継について、税務面・法務面からご助言いただきながら、計画的に進めたいと思っています。」
【税理士にお願いする具体的な内容】
- 現状分析と事業承継プランの作成
- 「まずは自社の財務状況や株式の保有状況、評価額など、現状を客観的に分析していただき、どのような承継方法が最適かアドバイスをお願いしたいです。」
- 「贈与による承継、相続による承継、またはMBO(マネジメント・バイアウト)など、可能な選択肢を比較し、リスクとメリットを整理していただけますか。」
- 自社株の評価と対策
- 「自社株の評価額が高くなると、相続税や贈与税の負担が大きくなりますので、評価の算定と、それを踏まえた節税対策についてもご相談したいです。」
- 「生前贈与や信託の活用など、株式の移転に関して税務上有利な方法があればご提案いただきたいです。」
- 事業承継税制の活用検討
- 「事業承継税制の適用が可能かどうかを調べていただき、条件に合う場合はその手続きのサポートもお願いしたいです。」
- 「特例措置や届出書類の提出期限など、見落としがないように管理していただきたいです。」
- 遺言書や贈与契約書の作成支援(他士業との連携)
- 「必要であれば、司法書士や弁護士とも連携していただき、遺言書の作成や贈与契約書の法的整備まで一貫してご協力いただけると助かります。」
- 後継者教育と会社運営支援
- 「子供が承継した後も、しばらくは顧問としてサポートしていただきたいと考えています。経営に関するアドバイスや、税務処理の継続的なサポートもお願いできればと存じます。」
【締めの言葉】
「会社は私が長年かけて育ててきた大切な財産です。それを次の世代に安心して託すために、税務だけでなく全体の視点からアドバイスいただきながら、今後の計画を一緒に進めていただけると大変心強いです。長期的な視点でご協力をお願いいたします。」
このように、具体的な目的と依頼内容を明確に伝えることで、税理士も的確なアドバイスや対応がしやすくなります。特に事業承継は、時間をかけて計画的に進めるべき重要なプロセスですので、できるだけ早い段階で相談を始めることをおすすめします。
円滑な事業承継に必要なこと
円滑な事業承継を実現するためには、単なる財産の移転や経営権の引き継ぎにとどまらず、企業の継続的な成長と従業員・取引先・顧客の安心を確保するための、戦略的かつ総合的な取り組みが求められます。以下に、円滑な事業承継に必要な要素を長文で詳しくご説明します。
円滑な事業承継に必要なこと
事業承継とは、現経営者が築き上げてきた企業を、次の世代へと引き継ぐプロセスを指します。しかし、それは単なる経営権の移譲にとどまらず、経営理念・企業文化・従業員への信頼・金融機関や取引先との関係といった、目に見えない「無形の資産」も継承することを意味します。円滑な事業承継を実現するためには、以下の5つの視点が重要です。
1. 後継者の早期選定と育成
後継者の選定は、事業承継の最重要項目です。適切な人物を見極め、早期に決定することが、企業の安定性に直結します。後継者は、経営能力だけでなく、社員や取引先からの信頼を得られる人格やリーダーシップも求められます。そのため、現経営者の在任中に実務経験を積ませ、段階的に経営判断を任せるなど、計画的な育成が不可欠です。
2. 経営理念とビジョンの継承
企業は、単なる利益追求の場ではなく、「なぜこの事業を行うのか」という理念や目的が存在します。経営者が長年培ってきた価値観やビジョンを、後継者に言葉と行動でしっかり伝えることが重要です。これが曖昧なままだと、承継後に経営の方向性がぶれる原因となり、社内外に不安を与えることになります。
3. 自社株式・資産の整理と税務対策
事業承継では、自社株式の移転が大きな課題となります。特に中小企業の場合、創業者や一族が多くの株式を保有しており、その評価額が高くなると、相続税や贈与税の負担が後継者に重くのしかかります。税理士などの専門家と連携し、株式の分散を避けつつ、納税資金の確保や事業承継税制の活用など、事前の準備が欠かせません。
4. 組織体制と社内外への周知
後継者が決まった後は、社内外への周知も重要なステップです。特に従業員に対しては、時間をかけて信頼を築くことが必要です。現経営者が後継者を支える姿勢を示すことで、従業員の不安を軽減し、スムーズな引継ぎにつながります。また、取引先や金融機関への挨拶・説明も行い、関係性の維持と信用の継続を図ることが大切です。
5. 法的整備と専門家との連携
事業承継では、遺言書や贈与契約書の作成、定款の見直し、株主構成の調整など、法的な整備も必要です。この際、税理士・弁護士・司法書士といった専門家の支援を受けることで、抜け漏れのない手続きを進めることができます。また、第三者承継(M&A)を視野に入れる場合も、専門的なアドバイザーの関与が欠かせません。
終わりに
事業承継は、「いつかやればいいこと」ではなく、「早めに始めるべき経営戦略の一環」です。先送りすればするほど、リスクと不確実性は増します。一方で、計画的に準備を進めれば、後継者が自信を持って経営を引き継ぎ、企業が次の成長段階へと進むことが可能になります。円滑な承継は、経営者の最後で最も重要な仕事の一つであり、その成功が企業の未来を決定づけると言っても過言ではありません。
事業承継を行う上で税理士の役割
事業承継を行う上で、税理士は非常に重要な役割を担います。事業承継は単なる「経営の引き継ぎ」ではなく、税務・財務・法務が複雑に絡み合うプロセスであり、失敗すれば多額の税金や相続トラブル、経営の混乱を引き起こしかねません。ここでは、税理士が果たす役割を5つの観点から詳しく説明します。
1. 現状分析と承継計画の策定支援
税理士は、会社の財務内容や株主構成、後継者の有無などを分析し、現経営者の意向に沿った事業承継プランの策定をサポートします。たとえば、以下のような課題を整理します:
- 自社株の評価額はどの程度か
- 株式や資産を誰にどのタイミングで移すべきか
- 相続か贈与、M&Aかなどの方法の選定
- 後継者に税負担がどれだけ発生するか
これらを踏まえ、無理のない承継スケジュールを立てることで、後継者が経営に集中できる環境づくりに貢献します。
2. 自社株式の評価と税務リスクの回避
事業承継では、自社株の評価額がそのまま相続税・贈与税の対象となるため、税理士による正確な株価算定と、それに基づいた税務リスクの把握が不可欠です。税理士は以下のような点を検討します:
- 類似業種比準方式や純資産方式など、最適な評価方法の選定
- 高額評価とならないような事前対策(利益調整・退職金・持株会社の活用等)
- 相続税納税資金の確保手段(生命保険活用・資産分割)
これにより、税負担を最小限に抑えた承継が可能になります。
3. 事業承継税制の適用支援
国は中小企業の円滑な承継を促進するため、「事業承継税制(非上場株式等の相続税・贈与税の猶予制度)」を設けています。
しかし、適用には厳格な条件と複雑な手続きがあり、制度を熟知した税理士の助言とサポートがなければ活用は困難です。
税理士は以下をサポートします:
- 制度適用の可否判断
- 特例承継計画の作成支援
- 必要書類の準備と提出代行
- 承継後の継続要件に関するモニタリングと対応
これにより、数千万円〜数億円単位の税負担が実質ゼロになる可能性もあります。
4. 関係士業・専門家との連携によるトータルサポート
事業承継には税務だけでなく、法的手続きや登記、契約書作成も伴います。税理士は司法書士、弁護士、中小企業診断士、M&Aアドバイザーなどと連携し、ワンストップの支援体制を構築することが可能です。
例えば:
- 遺言書作成 → 弁護士
- 株式名義変更登記 → 司法書士
- M&Aによる第三者承継 → 専門アドバイザー
これにより、経営者が安心して全体像を把握し、手続きを一括で進められるようになります。
5. 承継後の税務顧問・後継者支援
事業承継は「引き継いだら終わり」ではなく、「承継後の経営安定」まで含めて成功といえます。税理士は、後継者に対しても引き続き会計・税務・資金繰りの面でサポートし、以下のような業務を継続的に行います:
- 決算・税務申告の支援
- 銀行融資対策や資金計画の相談
- 節税・財務改善のアドバイス
- 経営計画策定の支援
これにより、後継者は安心して経営に専念でき、企業は継続的な発展を目指すことが可能になります。
まとめ
税理士は、事業承継における**「縁の下の力持ち」かつ「戦略の参謀役」**です。
早期に相談を開始し、税理士を中心とした専門家チームを活用することで、税金やトラブルを最小限に抑えながら、企業の未来をしっかりとつないでいくことができます。
事業承継のため税理士に渡す情報一覧
以下は、事業承継を税理士に依頼する際に渡すべき情報一覧です。これらの情報を事前に整理しておくことで、税理士は現状を正確に把握し、より的確なアドバイスと対策を講じることができます。Excelなどで一覧表にまとめておくと、スムーズに打ち合わせが進みます。
✅ 税理士に渡す情報一覧(事業承継編)
1. 【会社情報】
- 会社名、所在地、連絡先
- 法人番号
- 設立年月日
- 業種・事業内容の概要
- 定款の写し
- 株主名簿(最新)
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
2. 【財務情報】
- 過去3~5年分の決算書(貸借対照表・損益計算書・勘定科目内訳書)
- 税務申告書(法人税、消費税など)
- 月次試算表(最新)
- 借入金の一覧(金融機関名・金額・金利・返済期間)
- 担保・保証に関する情報(個人保証、物的担保など)
3. 【資産・株式情報】
- 自社株式の保有者一覧(氏名、保有株数、取得年)
- 株式譲渡履歴がある場合はその詳細
- 会社所有の不動産一覧(所在地、登記簿、固定資産評価額)
- その他会社所有の資産(車両、機械設備、保険など)
4. 【経営者個人の情報】
- 現経営者の戸籍謄本(承継時に相続が発生する可能性があるため)
- 現経営者の保有資産一覧(自社株、不動産、預金、有価証券など)
- 相続人の情報(配偶者・子どもなど)
- 既に作成済みの遺言書や信託契約があればその写し
- 現経営者が加入している生命保険の内容(契約者・被保険者・受取人)
5. 【後継者の情報】
- 後継予定者の氏名・生年月日・職歴・現在の役職
- 現在の社内外での評判・信頼関係に関する状況(可能なら)
- 後継者が保有している株式の有無と割合
6. 【承継の意向・課題】
- 事業承継の希望時期
- 承継方法の希望(相続、贈与、M&Aなど)
- 特に心配していること(税金、家族間の問題、従業員対応など)
- 経営理念・社是など後継者に残したい価値観
7. 【その他(必要に応じて)】
- 顧問弁護士・司法書士など、関係する専門家の連絡先
- 取引先や主要顧客リスト(承継後の関係維持に必要)
- 労働契約書、就業規則など(従業員との関係整理のため)
- 事業承継に関する社内での説明資料や方針書(あれば)
📎 提出のポイント
- 書類は紙でもPDFでもOKですが、整理された状態で渡すと非常に喜ばれます。
- 不明点や未整備の情報は、「準備中」としてリストアップしておけば問題ありません。
- 情報の共有には、**秘密保持契約(NDA)**の締結を事前にお願いしてもよいでしょう。
記入用テンプレート(Word)
以下は、税理士に渡す情報を整理するためのWord形式の記入用テンプレートの内容です。すぐに記入できる形式で作成しました。ご希望であれば、この内容をWordファイル(.docx)としてお渡しできます。
【事業承継に関する情報提供シート】
※税理士に提出するための整理用テンプレート
【1. 会社情報】
項目 | 内容 |
---|---|
会社名 | |
所在地 | |
法人番号 | |
設立年月日 | |
業種・事業内容 | |
定款の写しの有無 | □ 有 □ 無 |
登記事項証明書の写し | □ 有 □ 無 |
株主名簿 | □ 有 □ 無 |
【2. 財務情報】
項目 | 内容 |
---|---|
過去3〜5年分の決算書 | □ 提出済 □ 未提出 |
税務申告書 | □ 法人税 □ 消費税 □ 他( ) |
月次試算表(最新) | □ 有 □ 無 |
借入金一覧 | □ 有 □ 無 |
担保や保証の内容 |
【3. 資産・株式情報】
項目 | 内容 |
---|---|
自社株式の保有状況 | |
株式譲渡履歴(ある場合) | |
会社所有不動産 | □ 有 □ 無(あれば所在地と評価額記入) |
その他の会社資産(車両・設備等) |
【4. 経営者個人の情報】
項目 | 内容 |
---|---|
氏名・生年月日 | |
保有資産一覧 | □ 自社株 □ 不動産 □ 預金 □ 有価証券 |
相続人情報 | 配偶者: 子: 他: |
遺言書・信託契約 | □ 有 □ 無(内容: ) |
生命保険内容(契約者・受取人) |
【5. 後継者情報】
項目 | 内容 |
---|---|
氏名・生年月日 | |
現在の役職・職歴 | |
株式の保有状況 | □ 有 □ 無 保有割合:( %) |
後継者としての育成状況 |
【6. 承継に関する意向・課題】
項目 | 内容 |
---|---|
希望する承継時期 | |
承継方法の希望 | □ 相続 □ 贈与 □ M&A □ 未定 |
現在の不安・課題 | |
継承したい経営理念・ビジョン |
【7. その他】
項目 | 内容 |
---|---|
関係専門家の情報 | 顧問弁護士: 司法書士: 他: |
主要取引先・顧客リスト(任意) | □ 有 □ 無 |
労務関係の資料(就業規則等) | □ 有 □ 無 |
社内説明資料・方針書 | □ 有 □ 無 |
【備考欄】
(自由に記入してください)
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